「ヨウジヤマモトをはじめとした日本のアヴァンギャルドの影響を抜きにして、いまのファッションを語ることはできない」と語るのは、アクロニウム(ACRONYM)のデザイナー、エロルソン・ヒュー。
「ブラジル抜きのサッカーや柔道抜きの総合格闘技がありえないのと同じで、たとえ気づいていないとしても、その影響は誰もが受けています。
ボリューム感や仕立て方、黒という色のこと、そして時間や動き。
われわれが理解しているもののなかには、間違いなくヨウジヤマモトからの直接的な影響があります。
だから、それと無縁なところでやろうなんて思ったら、とたんに身動きがとれなくなるのです」 ファッション界は過去何十年間にわたって安定的に山本の影響を受け続けてきたが、最近になってそれが違ったかたちで表面化してきた。とんでもない目まぐるしさでトレンドが変わり、新しいアイディアはポップ界のスーパースターやインフルエンサーが採用しないと流行にならないなかで、不変で実のあるスタイルというのがかつてなく強く求められているのだ。
ファッションをファッションから救うにあたって頼みになるのはヨウジヤマモト、みたいな感じも業界内にはある。
最近はロンドンと東京に新店舗をオープンしたし、近々ニューヨークにも。
業界の山本頼みというのもあって、本人としてはさぞやラクではないことだろう。
最も著名な現役デザイナーの1人になったからといって、彼はそれを特に自慢に思ったりはしていない。言動はあくまで控えめだ。成功度合いを基準に自分のことを考えたりしないからだ。
「服に対する考え方は一度も変わったことがないですよ」と、彼一流の詩情ある、静かで、かつ劇的な効果がある語り口で。
その物腰は、さながらビート詩人か、あるいは厭世的になった老賢者のロックスターみたいな感じだった。それでこそ山本耀司。
アートに締め切りなんてない 天井が低くて梁と柱の太い木組みや幅広い床板が目につくそこは、オフィスというよりアパートのようだった。そこへやってきたのはエグゼクティブ・アドバイザーのキャロライン・ファブル。
アズディン・アライアのところで20年近くにわたって彼の右腕としてやってきたが、昨年、山本のチームの一員となった。山本はいまでも年に4回、新しいコレクションを発表している。ほとんどの場合、パリで。今回のインタビューの2日後には、1カ月後にパリで公開されるウィメンズコレクションを仕上げるために東京へ向かう。過酷なスケジュールだが、山本は疲れることなど苦にしない。つらいのは、それよりも締め切りだ。
山本耀司の言葉
1. **「服に対する考え方は一度も変わったことがないですよ。」**
山本耀司の一貫したデザイン哲学を表した言葉。
2. **「アートに締め切りなんてないんですから。いつできるかっていったら、できたときでしょう。」**
創作活動において自由を尊重する姿勢が現れています。
3. **「マネするならすればいい。しょせん、コピーはいつまでたってもコピーでしかないですから。僕はコピーなんてしないです。」**
山本耀司が自身のオリジナリティを大切にする姿勢が反映された言葉。
4. **「好きになるといったって、そんなの人によって趣味が全然違いますよ。」**
ファッションに対する価値観が多様であることを示す言葉です。
5. **「僕は東京っ子です。」**
自身のルーツやアイデンティティに対するシンプルで率直な表現です。