舞台は第二次世界大戦後のハリウッド。アメリカ中の若者が、映画業界への参入を夢見て集まった「黄金時代」をセンセーショナルに映し出す。製作を手がけるのは、ミュージカルドラマ「glee」やホラードラマ「アメリカン・ホラー・ストーリー」などを生み出した鬼才ライアン・マーフィーだ。
自身もゲイであるライアンは、かねてよりハリウッドのLGBTQに対する不平等な扱いに警鐘を鳴らしてきた。本作では、ハリウッドの華やかさだけでなく、人種やセクシュアリティ、セクハラ問題や格差社会など当時の無秩序にも鋭く切り込む。
予告編にある「もしも歴史を塗り替えられたら?」もテーマのひとつ。実際に、戦後のハリウッドでは、白人以外の人種が主演したり、多様なセクシュアリティが認められるなど到底なかった。しかし本作では、若者たちがこの誤った価値観に疑問を呈し、映画業界に革命を起こそうと奮闘する姿が描かれる。ライアンの過去のハリウッドへの強き思いが見え隠れする一作だ。
作中で登場人物が身につけるアイコニックなファッションで、特に注目したいのが帽子だ。1940年代のハリウッドでは、階級、人種、性別、年齢関係なくみんな帽子を愛していた。映画スタジオの社長夫人が身につける個性あふれる上品な帽子に、若手監督の個性が光る黒のハット、ガソリンスタジオでイケメンたちがかぶる軍人風のキャップなど、帽子によってその人が置かれた立場や性格までも読み取ることができる。